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circaのブログ

ほんでもまんで生きとるわいね

あなたへ

昨夜は高倉健さん主演の『あなたへ』を見た。そして眠れなくなった。

睡眠が浅い貧眠女子はいつものこと。いつもなら不眠でブルーになるところだけれど、昨夜は健さんの遺作となった映画に眠りを邪魔された。嬉しい「眠れない夜」となった。

ストーリーが頭から離れずに、夜中に目が覚める度に、さっき見た映画のシーンの一つひとつが蘇ってきて、頭の中であれこれと思いを巡らせていた。いつの間にか寝入ってしまったけれど、わたしの心の中に、何か強烈な印象が残り、刻まれた。映画を見て、こんなに熱中したのは久しぶりのことだ。『ぽっぽや』を見た時も同じように、強烈な寂しさや孤独を、映像の中から、健さんの表情から受け取ったなあ。

今朝は連ドラの後、健さんのドキュメンタリーが放送されていた。当然、見入ってしまった。健さんの容姿の素晴らしさよりも、健さんの顔に刻まれた深い皺や、いつもどこか寂しそうな表情に、目が釘付けになる。そして、改めて惹かれた。

健さんは映像の中で、ざっくりとだけれど、こんなことを言っていた。

「俳優にとって大事なのは、人生経験と生き方。生き方が出るんでしょうね。経験していないことを僕は演じられないんです」

人生経験と生き方かあ。生きざまとか経験してきたことって、どうして人の顔に表れるんだろう。人って面白い。表情の中に、生きていく内に、色んな思いが刻まれていく。俳優や芸術家に限らず、誰もがそうだ。

健さん亡き後、テレビで色んな映画を見た。改めて見たものも多かったけれど、『網走番外地』などは初めて見た。わたしの中で健さんと言えば『八甲田山』以降の、寡黙で「自分、不器用ですから」のイメージが強かったから、任侠映画は新鮮で純粋に楽しんだ。健さんの映画に、演じる表情や言葉に、何度も感情を大きく揺さぶられた。昨夜もそうだった。『あなたへ』の中の健さんは、木陰のような温かさがあった。俳優の高倉健さんと言えば勿論、一番陽のあたる場所にいたはずなのに、スクリーンを通して伝わってくるのはいつも、真夏の太陽の下の、木陰のような温かさだった。

往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし

高倉健さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

そして最後に、わたしに強烈な寂しさと温かさを与えてくれた、遺作『あなたへ』のように、お別れを言いたいと思います。

さようなら
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