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circaのブログ

ほんでもまんで生きとるわいね

怒鳴る母 笑う母

先週病院の帰り、薬局で処方箋を渡して待っていた時のこと。

 

幼稚園生くらいの小さな男の子を連れた若いお母さん。薬局に入って来るなり、我が子に怒鳴り始めました。

「ほら、テレビを見るんじゃないの! 落ち着いて座っていなさい! 先生にまで『落ち着きのない子ですね』って言われて、お母さん恥ずかしくて仕方ない!」

若いお母さんは、終始怒っています。強い語気で我が子を叱り、男の子の頭や肩を小突いています。力まかせに殴っている訳じゃなかったけれど、見ていて気持のいいもんじゃありません。「先生にまであんなこと言われて、お母さん恥ずかしい!」を繰り返す若い母親。母親の怒りに委縮して、何も言えずに涙を浮かべている男の子。狭い薬局の中には若い母親の甲高い怒鳴り声だけが響き、薬待ちをしている人たちは皆、気まずい表情をしています。

 

子を叱ることも時には必要だろうけど、どうせなら家に帰ってから、もっと冷静になって言い聞かせればいいのに。怒鳴れば怒鳴る程、母親の怒りは増す一方で、いっこうに鎮まる気配はなく、若い女性の怒鳴り声はエスカレートするばかり。男の子は泣き声ひとつ立てずにうつむいたままです。自分の息子に「恥ずかしい子」と繰り返し言っていたけれど、わたしの目には、恥ずかしいのは母親の方で、見苦しい人に見えました。

 

同じく先週、病院の待合室で順番を待っていた時のこと。

 

隣の検査室から、赤ちゃんの甲高い泣き声が聞こえてきました。何の検査なのか分からないけれど、フロア中に響く赤ちゃんの泣き声は、もはや悲鳴です。いつもだったら「うるさいなあ」と内心思うだろうに、その日のわたしは赤ちゃんの泣き声をうっとうしいと思うこともなく、持っていた本を読み続けていました。

 

検査が終わるとお母さんらしき若い女性の声が聞こえました。

「検査終わったよ。よく頑張ったね。偉かったね」

赤ちゃんの悲鳴のような泣き声は中々止まないけれど、お母さんの優しい声が検査室から漏れ聞こえてきました。すると検査技師の男性の声も続きます。

「ハイ、これで検査は終わりだよ。よく頑張ったね。さようなら。早く元気になってね」

 

赤ちゃんの泣き声がピタっと止まりました。

 

お母さんの声も、検査技師さんの声も、看護師さんたちの声も、みんな優しい。言葉は理解出来なくても、周りの大人たちの声音や表情を見て、赤ん坊もきっと安心したんだろうなと思いました。病院のフロアに、何となくほのぼのとした空気が流れたような気がしました。待合室の患者さんの多くが、ちょっと笑顔になったようにも見えました。わたしも他の患者さんたちと同じように、気が付けばそっと笑っていました。