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circaのブログ

ほんでもまんで生きとるわいね

子供の頃 ~いじめ~

「海底の君へ」を見ながら思い出した。わたしが子供の頃にも、いじめがあったことを。

 

わたしは、いじめられた記憶が余りない。中学生になるまで、いつも学年で上から二番目くらいに背が高くて、スポーツも万能だった。喧嘩も強かったせいか、学生時代にいじめられた記憶はない。でも幼なじみは小学生の時、いじめられっ子だった。

 

生まれつき脚が悪くて身体も小さくて(中学に入った途端にわたしよりずっと背が伸びたけど)、体育の授業は殆ど休む子。それがわたしの幼なじみだった。よく男子に足を引っかけられて転んでいた。学校の帰り道、彼女と並んで歩いていると、悪ガキ達が草むらで待ち伏せをしていて、わたしたちのランドセルを背後からグイっと引っ張った。華奢な彼女は簡単に転んでしまう。でも身体の大きなわたしは少しバランスを崩すくらいで、転ぶことはなかった。わたしは悪ガキ達をにらみつけると、一目散に逃げる連中を追いかけて、あっという間に全員を道端に放り投げるようなツワモノだった。そんなことの繰り返しだったので、幼なじみの身体はいつもすり傷やアザが絶えなかった。

 

修学旅行先で、わたしと彼女の布団だけ隠されたこともあった。二人で深夜までトイレで過ごした後、わたしは彼女を連れて、女の子達が眠る大部屋へ入って行った。そして熟睡しているいじめっ子のリーダー格の子を布団から放り出して、二人で一つの布団をかけて寝た。今でこそ立場が逆転して、しっかり者は幼なじみの方だけど、子供の頃のわたしは怖いもの知らずだった。わたしの記憶に残る子供時代のいじめは、この程度だった。でも実際に彼女が受けていたいじめは、こんなものじゃなかったのだ。

 

大人になって二人でイギリスに渡った時に、彼女から初めて聞いた話がある。クラスの女子からよく、学校の上履きに水をためて、それを飲むよう強要されていたのだそうだ。言うことを聞かなければもっと酷い目に遭わせると、脅されていたらしい。彼女は言われるがままにいつも、汚れた上履きに入った水を飲んでいたそうだ。わたしはそのことを、二十歳を過ぎるまで知らなかった。彼女がそんな目に遭っていたことを知って、少なからずショックを受けた。いじめられっ子の彼女をいつも守ってきたと思っていたわたしは、自分の浅はかさを悔いた。

 

幼なじみがかつてわたしに言った言葉を、今改めて思い出す。ロンドンを引き上げて、日本へ帰ろうと彼女を説得していた時のことだ。彼女は、日本には帰らないと言い張った。その理由を尋ねると、彼女はこう言った。

 

「日本には、わたしの居場所がないから」

 

彼女の心の傷の深さを、あの時初めて思い知った。そして彼女は一人でイギリスに残り、その後結婚して今は幸せに暮らしている。けれど、大好きなお父さんの死に目には会えなかった。

 

別の友人もまた、中学生の時に酷いいじめを受けた。彼女とは二十歳を過ぎてからロンドンで知り合ったので、わたしは彼女の学生時代のことは全く知らない。でも彼女は中学時代のいじめが原因で、ドラマの中の青年のようにたびたびパニック発作を起こすようになり、やがて自分の殻に閉じこもるようになったという。イギリスにいた頃は、のびのびと暮らしていた。でも帰国してこの20数年は、引きこもりがちの生活をしている。三十を過ぎた頃、パニック発作はもう殆ど出なくなったと言っていたけど、彼女は今でも、ごく一部の親しい友人を除いて、人と関わることを嫌う。

 

「いじめは人の人生を大きく変えてしまう、犯罪です」

ドラマの後に紹介された体験者の言葉を聞いて、彼女たちのことを思った。