読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

circaのブログ

ほんでもまんで生きとるわいね

夢のあと

昔好きだった男の子にばったり会った。

 

彼とは幼稚園からの幼なじみで、年長組に入る頃には彼と相合い傘をして歩いていたのを思い出す。今思えば、わたしは中々ませた子供だった。
 
30年ぶりに会うTくんを前に、わたしはドギマギして何を話せばいいのか分からなかった。でも気が付けばお互い笑いながら、長いブランクの時間をどんな風に過ごしてきたかを話し合っていた。過去にあった切ない思い出など、今となっては全てが笑い話だった。
 
「中学生の時、Tくんのことが好きだった○組の★さんっていたでしょ。覚えてる?」
「ああ、★さん。いたねえ、そんな子」Tくんが照れくさそうに笑う。
「あの頃は、気さくにTくんに話しかける彼女に焼きもち焼いたり嫉妬したりしてたけど、本当はわたし彼女に憧れてたんだなって、今は思うんだ。彼女みたいになりたかったんだよね。素直じゃなかったからね、わたしは」
「相当のシャイだったよね」
そう言ってTくんが笑った。
 
「きみは今は誰といるの?」
唐突にダイレクトに、Tくんから質問が飛んできた。
「え、あぁ・・一人だよ。一人暮らししてる」
わたしの答えに驚く様子もなく、そうかと笑うTくん。
「わたしはもうね、一生一人だろうね。恋をする気力もなくなっちゃったし、こんな身体になっちゃったし。それにもう、すっかりおばさんだもの」
照れ笑いを隠せないわたしに、最後にTくんが言った。
「そうかな。病気になったって歳をとったって、きみ自身が変わってしまった訳じゃないでしょ。未来なんて何が起こるか分からないよ」
 
・・そこで目が覚めた。ああ、夢か。
わたしは久しぶりに夢を見ていた。Tくんのことは中学を卒業して以来、思い出すことも殆どなかったのに、彼は昔と変わらない笑顔でぽんと夢の中に現れた。そしてTくんとの会話は穏やかで、ドキドキも壁ドンもないのにむしょうに楽しかった。現実のTくんは、20代で結婚したと噂で聞いた。今は奥さんと子供と、幸せに暮らしていると思う。Tくんへの未練はもう欠片も残っていないけど、夢の中でも昔と変わらぬ姿の彼に会えたことは嬉しかった。
 
恋・・かあ。もう随分長いことしていないし、そんなことわたしの人生でもう二度とすることもないだろう。現実のわたしはいつの間にかそんな風に、勝手に自分の未来を決めつけてしまっていたのかも知れないな。
 
熱いコーヒーを飲みながら、そんな自分の心を振り返った。
夢の中でTくんに会えたおかげで、今日はいい一日になりそうな気がする。

f:id:circax:20160704074837j:plain